DNARオーダーとRRS
DNAR(do not attempt resuscitation)の定義は患者本人または患者の利益にかかわる代理者の意思決定をうけて心肺蘇生法をおこなわないことです。
ただし,患者ないし代理者へのinformed consentと社会的な患者の医療拒否権の保障が前提となります。欧米では実施のためのガイドラインも公表されています。
1995年日本救急医学会救命救急法検討委員会から「DNRとは尊厳死の概念に相通じるもので,癌の末期,老衰,救命の可能性がない患者などで,本人または家族の希望で心肺蘇生法(CPR)をおこなわないこと」,「これに基づいて医師が指示する場合をDNR指示(do not resuscitation order)という」との定義が示されています。
しかし,わが国の実情はいまだ患者の医療拒否権について明確な社会合意が形成されたとはいい難く,またDNR実施のガイドラインも公的な発表はなされていません。
なおAHA Guideline 2000では,DNRが蘇生する可能性が高いのに蘇生治療は施行しないとの印象を持たれ易いとの考えから,attemptを加え,蘇生に成功することがそう多くない中で蘇生のための処置を試みない用語としてDNAR(do not attempt resuscitation)が使用されています。
院内での心停止例の場合、
DNAR例であるかどうかは、医療スタッフにおいて必要不可欠な情報です。
院内急変時に、DNARの確認を即座に行う工夫により、CPRを含むRRSの初動が円滑化されると考えています。(
ある施設の取り組み)
参考文献
- 文献
The Medical Emergency Team System and not-for-resuscitation orders: results from the MERIT study
Resuscitation. 2008 Dec;79(3):391-7. doi: 10.1016/j.resuscitation.2008.07.021. Epub 2008 Oct 25.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18952354
- 説明
オーストラリアのコホート研究では、ほとんどの死亡は以前に文書化されNFR(not-for-resuscitation)オーダーの患者で発生したが、NFRオーダーは心停止コールまたは計画外のICU入院の前にはまれであった。METシステムを導入した病院では救急隊からより多くのNFR命令が出された。METの配分、病院の状態、病院の病床数、都市圏の所在地を考慮しても、NFRオーダーの差異の50%未満しか説明ができない。
- 文献
Enhanced end-of-life care associated with deploying a rapid response team: a pilot study.
J Hosp Med. 2009 Sep;4(7):449-52. doi: 10.1002/jhm.451
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19753581
- 説明
当院にRRTを設置したことにより、根治治療を目的とした患者の転帰への影響はほとんどなく、RRTの導入は終末期の疼痛管理および心理社会的ケアの全般的改善と関連していた。
- 文献
Rapid response team calls to patients with a pre-existing not for resuscitation order
The rapid response system and end-of-life care.
Curr Opin Crit Care. 2013 Dec;19(6):616-23. doi: 10.1097/MCC.0b013e3283636be2.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19753581
- 説明
NFR(not-for-resuscitation)の事前指示のある患者へのRRTの要請はまれではない。最も一般的なのは何らかの懸念であり、起動時に呼吸関連の異常が観察され、同様の介入レベルが必要であり、ICUへの入室はより少なく、2回目以降の RRT起動時には、NFR(not-for-resuscitation)の指示がでている。
RRTの3分の1までが、終末期に関係している。これらの患者をよく理解することで、より入院患者のACPを改善に導く。
- 文献
The rapid response system and end-of-life care.
Curr Opin Crit Care. 2013 Dec;19(6):616-23. doi: 10.1097/MCC.0b013e3283636be2.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23799463
- 説明
RRTの3分の1までが、終末期に関係している。これらの患者をよく理解することで、より入院患者のACPを改善に導く。
- 文献
The medical emergency team call: a sentinel event that triggers goals of care discussion
Crit Care Med. 2014 Feb;42(2):322-7. doi: 10.1097/CCM.0b013e3182a27413.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23989179
- 説明
RRSの導入は、DNRの増加と関連していた。前哨イベントとして、METの起動とCCUへの移動は、治療のゴール検討をより促進し、しばしば 緩和ケア戦略へつながる。
- 文献
Pre-existing risk factors for in-hospital death among older patients could be used to initiate end-of-life discussions rather than Rapid Response System calls: A case-control study.
Resuscitation. 2016 Dec;109:76-80. doi: 10.1016/j.resuscitation.2016.09.031. Epub 2016 Oct 18.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27769903
- 説明
RRSへの関与を必要とする高齢の悪化した患者のサンプルでは、慢性疾患、認知障害および虚弱性の複数の指標が死亡リスクの高さと実質的に関連していた。限定的な治療をするよりも無益な介入を防ぐ可能性がある終末期医療の議論を開始することを臨床医に知らしめていく必要がある。
- 文献
Who Benefits from Aggressive Rapid Response System Treatments Near the End of Life? A Retrospective Cohort Study.
Jt Comm J Qual Patient Saf. 2018 Sep;44(9):505-513. doi: 10.1016/j.jcjq.2018.04.001. Epub 2018 Jun 27.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30166034
- 説明
臨床転帰不良および死亡に明らかに関連する同定可能な危険因子は、より消極的な治療を施すための指針として使用することができる。
そのようなより消極的な対応策には、ICU移動への再検討、NFRオーダーへの順守、およびRRSチーム起動よりも、終末期医療への移行がある。